お父さんのいびき

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お父さんのいびき

先週、母親方の叔父が癌で亡くなってお通夜に行ってきた。まだ62歳と若い年齢で母親の11下の弟だけど、最期はお爺さんになっていた。
ウチの父親も癌で亡くなって確か62歳だったんで、叔父がオトンと重なって見えた。

叔父さんの生前に二度お見舞いに行ったんだけど、死ぬ1週間前に自宅にお邪魔させてもらった。大きいベッドと酸素の供給機2台あってリビングは半分くらいになっていた。僕と妻と子と、叔父さんの弟夫妻と、叔父さんの奥さんと従兄弟である子供たち3人と、その子供たちは2人で小さな部屋に12人居た。12人居た叔父さん以外の11人は皆、叔父さんの寝息や寝返りや寝言に敏感で、長男くんが側で様子を観ていた。
たわいもない話ばかりした。孫たちの特技とか、趣味とか、赤ちゃんの頃の話とか。従兄弟の子の赤ちゃんがブロッコリー食べてて「うわー凄い〜、見てん見てん」と野菜嫌いのウチの子に促す妻と無視する子とか。誰かが「お父さんいびきでかい」って言うてたりとか。そんないびきを僕らは一緒に聞いてるだけのたわいもない時間。特に込み入った話もしないままの居心地の良い人たちの笑顔とか。なんか死にそうな人を皆それぞれ自覚してて、そんなお父さんのいびきだけでも十分なんとなく幸せなんです、僕たち私たち、わはは。って完璧な時間だった。

その最期のお見舞いの時は叔父さんはずっと眠っていたように思ったんだけど、通夜の時に奥さんから「あの日みーくん(僕)ら帰ってからな、お父さんが、みーくんの子供大きなってたなぁ、て言うてたで。話も結構聞いてないようで聞いとうでー」とおっしゃってくれた。僕は嬉しさと驚きで涙グワって堪えて笑った。
ブロッコリーの下りとか、ウチのオトンがオカンにおんぶされて病院連れて行った話とかも全部聞いてたんかもしれへんなぁってジーンとした。

お店にも何度か来て応援してくれてたかっこいい叔父さんだった。死に際にちゃんと家族まとまって沢山の人がお見舞いに来られてたん、やっぱりその人となりが魅力なんやったんやと思う。いい感じのいびき忘れない。

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