2020年 9月

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拝啓 お客さん

「夢うつつ」

前に働いてたお店の上司に「お客様をお客さんと呼ぶ店は潰れる」と聞いた事がある。「おもてなし精神」の事を「ホスピタリティ」と呼ぶ事とか。そう習ったんで僕もお客様と呼んでいたんだけど、僕にとって何となく違和感があって、自分で店するようになってからは「お客さん」と呼んでいる。何てことないことなんだけど、後々に重要だと思うようになった。

とにかくコロナの影響が凄くて色々と気付かされた。コロナ前までのお店とコロナ後のお店とカラーが変わったように思う。以前はカラフルで毎日ドンパチ花火上げたい欲が強く、お客さんが驚くことを企画したり、新メニューや、イベントしたり、毎月目新しい事をしたかった。
100%お客さんが欲しがるものを提供しなきゃって、自分の身の丈に合わなくても背伸びしながらチャレンジしたかった。というか、今思えば、チャレンジし続けないと不安で、チャレンジしてる自分に酔うてたように思う。派手なホームランをいつも狙っていた。たまにまぐれで打ててしまうから勘違いしたんだと思う。
いつもMAX歯を食い縛りながらしてたんで、忙しい時はオラオラ系でスタッフを押し除けてしていた。そんなんだから急に身体壊したり、パン切らしたり、店閉めたり、鬱になったり、浮き沈みの激しかったりしたんだろうなぁ。

コロナ自粛を経て、先ず自分を大切にしようと決めた。派手な企画やセールは止めて、出来ることを確実に、浮き沈みを失くそうと決めた。コロナ後のお店は、以前よりつまらないお店になったと感じたお客さんもいるだろう。僕自身が背伸びせずに等身大で働いてるせいだと思う。以前の無理したトリッキーな企画は全くしない。コロナ対策として、換気とアルコール消毒は当たり前だけど、料理提供後1時間で退店のお願いもしだした。以前までなら考えられないお願いだと思う。なんせ100%お客さんありきで無理して営業してたんだから。
コロナ対策として意味があるのか微妙だけど、このご時世、飲食店が軒並み閉店していく悲惨な時代に、僕は回転率を上げてお店を存続させることを最優先で考えた。お客さんを大切にするあまり全てをお客さん主導で営業してるとお店が潰れてしまう。お客さんを大切したいなら先ず、生き残らないといけない。美味しいパンが焼けますようにと、毎日願えるのもお店あってのことです。

僕は普通の人だし、ド凡人なんです。ホームランバッターじゃないし、話もたいして面白くないです。だけど、そこそこ美味しいパンが焼けます。高級パンとか焼かないけど、普通にまぁまぁ美味しいパンは焼けます。そのまぁまぁのパンは劇的に泣ける程美味しいわけじゃないけど、なんかくせになるような、また食べたいと思わせるパンです。僕は今この普通の何も起こらない感じの店が自分にピッタリフィットしています。おもんないでしょ?こんなブログ。せやけど、これが今んとこ1番心地よいんです。以前のトリッキーなお店を期待しているお客さんたちは離れてしまった。最近はひとりでふらっと来店されるお客さんが増えた。どちらに優劣をつけるとかではないのだ。自分を大切にしたいんです。なんか恥ずかしいのでこの辺で終わります。僕はお客さんが好きです。